日本語版

花屋のオジサンの背中を押してみる。

 毎週、土曜日には、事務所の入り口にお花を飾っている。

 どんなお花を活けようかと、考えるのも、楽しみでもあり、時には苦痛でもある。

 花器もさほど、多くなく、安価な予算の中で、できるだけ多くの人の心が和むように

 生花を活けているが、そのことは、自分自身のためだったのでは、

 と思うようになってきている。

 

 さて、昨日、いつもの花屋さんに出向いたわけだが、

 テーブルの上には、トロンボーンが、ドーンと置かれている。

 「久しぶりに、トロンボーンを磨いてみてるんだ。」

 花屋さんの片隅に置かれていたトロンボーン。

 今日は、店の入り口のテーブルの上に、少しばかり、誇らしげに置かれている。

 尋ねてみたら、

 「ここのところ、トロンボーンを演奏してくれないか?」と、数箇所の楽団の要望があるらしい。

 「僕さ、演奏はプロじゃないからね。趣味の楽団で、楽しく演奏しているぐらいで満足なんだけどな」

 「だけど、頼みに来られた人たちは、トロンボーン奏者がいなくて、困っているわけでしょ。」

 「もう、相当吹いてないから、満足な音がだせるかどうかも、不安だしなー。

  僕はもう、54歳だよ」

 「だけどさ、これが、70歳の高齢者だったら、要望はなかったと、私は思うけれど。

  せっかく、頼まれれているんだから、しっかり練習して、演奏してみたら?」

  「こうして、トロンボーンを磨いているってことは、演奏してみようかなと、

  迷っているんじゃないの?」

 「54歳、迷うことないよ、やってみたら?」

  (ちょっと、他人のことに干渉しすぎてるかな?背中押しすぎたかな?)

 

  帰り際、振り返って見た花屋さんの顔は、いつも以上に、朗らかで嬉しそうな顔つきをしていた。。。。

  

-日本語版